受章

経済学研究科 吉川 洋 名誉教授 令和7年秋 瑞宝重光章を受章

吉川 洋 名誉教授

吉川洋先生の瑞宝重光賞の受章を心よりお喜び申し上げます。

吉川先生はこれまでわが国のマクロ経済研究の第1 人者として、ケインズ経済学的なマクロ経済理論とその日本経済への応用を主たる研究課題とし、多数の業績を上げ、現実の経済政策の形成にも大きな役割を果たされました。

社会科学としてのマクロ経済学には、学派という点からは、市場メカニズムの役割を重視する「新古典派経済学」と市場の失敗と政府の役割を重視する「ケインズ経済学」という2つの世界的潮流があります。また、対象とする研究テーマという点からは、短期のマクロ現象を取り扱う景気循環理論と、中長期的なマクロ現象を取り扱う経済成長理論があります。吉川先生は、ケインズ経済学の立場から、長い間、景気循環理論と経済成長理論の両面で発展に重要な理論的貢献をされただけでなく、その日本経済への応用にも多大な成果を残されました。

とくに、設備投資に関する理論分析の先駆けとなった研究、わが国の為替レートの長期的な決定メカニズムを解明した研究、および経済物理学的アプローチを応用した研究は、マクロ経済学研究の新潮流を開拓する成果として、世界的に高く評価されています。また、日本経済のマクロ分析に関する数多くの著作は、日本が短期的・中長期的に直面する課題を鋭く分析した成果として内外から高い評価を受けただけでなく、当時の政策決定に大きな影響を与えるものでした。これら卓越した業績に対して、これまでに日経経済図書文化賞、サントリー学芸賞、エコノミスト賞、読売・吉野作造賞など数々の賞の受賞に輝いたほか、2010年度には紫綬褒章を受章、2023年度には文化功労者に選ばれました。

吉川先生は、長年わが国の経済学会活動をリードし、2002年には日本経済学会の会長になられました。また、2001年1月~2006年および2008年~2009年に内閣府経済財政諮問会議議員を務めるなど、数多くの政府の審議会等で活躍し、わが国の経済政策上重要な諸課題に対して多大な貢献を行われました。さらに、2009年からは東京大学大学院経済学研究科長を務め、学内行政でも大きな貢献をされました。

以上のように、吉川 洋氏は、大学における教育と研究の範囲にとどまらず広く社会的にも大きな貢献をされ、日本の経済社会に多大な影響を長年にわたって与えました。このたびの吉川先生のご顕彰を心からお慶び申し上げますとともに、先生の益々のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。

 

(大学院経済学研究科・経済学部 福田慎一)
(令和7年 秋 )