研究科長挨拶

星 岳雄
東大の大学院経済学研究科・経済学部のホームページにようこそ。研究科長・学部長の星岳雄です。経済学部は1919年に創設されて以来、日本の経済学をリードするとともに、多くの人材を輩出し、日本の経済発展に貢献してきました。現在、東大の経済学部は日本一であるだけでなく、東アジアでも一番という評価を得ています。
大学院経済学研究科には修士課程と博士課程があり、経済専攻とマネジメント専攻に分かれています。経済専攻には経済学、統計学、地域研究、経済史の各コースが、マネジメント専攻には経営学と数量ファイナンスのコースがあり、院生はその中から一つを選びます。経済学部には経済学科、経営学科、金融学科の三つがあります。
経済学、経営学、そして金融も、個人や組織の経済行動を分析して、経済システムの動きを理解しようとする点では変わりません。どれも科学的なアプローチを使います。理論から導き出される仮説を現実のデータを使って検証するという演繹的方法と、現実を注意深く観察することによって理論を精緻化するという帰納的方法を組み合わせて、真理に近づこうとします。ただし、経済システムは自然科学が対象とするシステムとは違って、自由意思をもつ人間によって構成されています。そうしたシステムを理解するには、自然科学的なアプローチだけではなく、歴史、社会学、人類学、心理学など、人間を対象とする学問からの知見も重要になります。
最近 STEAM (Science, Technology, Engineering, the Arts, and Mathematics) 教育という言葉が使われるようになりましたが、経済学教育はずっと前から STEAM 教育だったと言えるでしょう。東大の経済学部には、経済学部を主に目指す文科Ⅱ類からだけではなく、文科Ⅲ類や理科Ⅰ類・Ⅱ類からも多数の学生が進学します。
経済学研究科・経済学部は、広く社会と関わることを重視して、5つのセンターを設けています。日本経済国際共同研究センター(CIRJE)は、日本経済に関する先端的研究を国際的に行い、社会に還元することを目標にしています。金融教育研究センター(CARF)は、金融の理論と実践によって日本経済だけでなくアジアの経済発展に寄与するのが目的です。経営教育研究センター(MERC)は、特に生産管理・組織管理に関わる研究と教育を行っています。政策評価研究教育センター(CREPE)は、EBPM(Evidence Based Policy Making:証拠に基づいた政策決定)に不可欠な政策評価の方法について研究・教育を行い、日本の様々な政策が証拠に基づいたものに近づいていくように働きかけています。センターのなかで一番新しいのが、2020年に誕生した東京大学マーケットデザインセンター(UTMD)で、社会の様々な問題を解決するために、市場的な仕組みを構築し、実装していくことを目指しています。
学生の皆さん、経済学研究科・経済学部で、自分のやりたいことを見つけることができるように、お手伝いします。研究者の皆さん、是非東大にいらして頂いて(いまはバーチャルですが将来は実際に)、先端研究を進めましょう。実務家・政策担当者の皆さん、問題解決のために協力したいと思います。そして、こうした活動を支援して頂けるみなさん、ぜひご連絡ください。日本、アジア、世界の経済システムの理解を深め、ともに社会を発展させていきましょう。
2021年4月1日
東京大学大学院経済学研究科長・経済学部長
星 岳雄