受賞

武田晴人名誉教授が日本学士院賞を受賞

武田晴人名誉教授が日本学士院賞を授与されることが決定しました。

研究題目等は以下のとおりです。

研究題目:日本経済の発展と財閥本社—持株会社と内部資本市場

受賞理由:武田晴人氏は、著書『日本経済の発展と財閥本社—持株会社と内部資本市場』(東京大学出版会、2020年2月)において、三井・三菱・住友の三大財閥の企業組織を、財閥同族と本社および子会社群の三層として捉え、財閥の経営戦略が本社と子会社によっていかに決められ、投資資金が財閥内外からいかに調達されたかを明らかにしました。

 武田氏によれば、財閥同族は所有者としての利害は主張しつつも利益の取得を抑制して再投資を優先し、経営戦略は子会社群の提案を踏まえつつ本社が決定するが、資金調達の責任は本社が担い、子会社はリスクの高い投資を行う起業の自由度を与えられていました。

 こうして三大財閥は、通説と異なり、軽工業よりも重工業への投資を積極的に展開するため、多額の資金を必要としていました。必要資金を財閥内部で調達できたという「自己金融」説は、1920年代の不況期における一時的特徴であると武田氏は見なしました。

このようにして、武田氏は、財閥内外から本社が調達した資金を用いて、子会社群が活発な活動を展開したというダイナミックな財閥像を打ち出し、三大財閥を中心とする近代日本経済史・経営史の研究に大きく貢献しました。

 


用語解説:

  • 財閥本社
    独占的資本家や企業家の一団である財閥の本社。財閥の同族によりほぼ全額出資で設立され、財閥企業群の持株会社として、経営戦略の立案・調整、資金調達を担った。

  • 持株会社
    株式の所有によって子会社群の企業統治を担うことを目的とする会社であり、その保有する株式などの金融資産の操作を通して資金調達を行った。

  • 内部資本市場
    企業組織内部での資金の移動を、企業間の市場を介する資金移動と類似したものと見なした用語。

  • 財閥同族
    財閥の出資者として君臨していた創業者一族を指す用語。日本の財閥では、事業利益の再投資を優先することに特徴があり、同族を構成する家族それぞれに持分が定められていたが、これを処分する自由はなかった。


 

日本学士院賞授賞の決定について(日本学士院ウエブサイト) 別ウィンドウで開く