研究科長挨拶


経済学研究科長・経済学部長
渡辺 努

東京大学経済学部は本年4月に創立100周年を迎えます。この間,戦争や自然災害など大きなショックが幾度となく我が国を襲い,日本経済に激震が走りました。平成の30年間に限ってみても,バブル崩壊,人口構成の変化,ITやAIなど急速な技術進歩を背景として,内外の経済環境が大きく変化する中で,日本経済は長期にわたる停滞を余儀なくされてきました。ここ数年は雇用環境が幾分改善するなど明るい面も見えていますが,財政,社会保障,金融,デフレなど日本経済の構造問題は解決されておらず,ポスト平成の時代に持ち越されようとしています。

こうした激動の時代を生き抜くには,社会や経済の変化を的確に把握し,その先を見通す力が不可欠です。社会や経済の変化の予兆を検知する能力といってもよいかもしれません。これは消費者,企業経営者,政策担当者などすべての人に当てはまります。しかも,その予兆をつかむ能力とは,神がかり的なひらめきではなく,多くの人に説明できる,そして納得してもらえるものでなければいけません。社会や経済の激動期にあって,経済学や経営学は,こうした意味での予兆を検知するツールを提供する役割があります。ただし,そのツールは現時点では残念ながら完全ではありません。2008年の世界金融危機の勃発を経済学者が予測できなかったことに象徴されるように,不備が多々あります。人々が安全に,そして安心して暮らせる社会・経済の実現に向けて,理論・実証研究の蓄積を加速させる必要があります。

東京大学大学院経済学研究科・経済学部では,現代社会を成り立たせる経済の仕組みや多くの人々が日々の糧を得る企業活動,さらに金融の役割などを中心にして,経済・経営・金融に関連する幅広い分野の研究者が,長年培ってきた伝統を生かしつつ最先端の研究を行っています。また経済・社会が歴史の流れの中に展開していることを踏まえ,将来展望の基礎となる歴史研究にも取り組んでいます。

そうした活動の結果,当研究科・学部は,日本の経済学や経営学の研究・教育活動をリードし,学界・実業界・政府などで活躍する人材を数多く輩出してきました。これまでの良き伝統を守りつつ,しかしそれに安住することなく,時代を先取りした研究・教育活動を展開してまいります。

 

  2019年4月1日
東京大学大学院経済学研究科長・経済学部長
渡辺 努
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